
24 巻, 1号 — 2023年4月
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多文化な学校環境における平和教育
シスターM.カリン・クットナー、SSND、バイエルン管区オーストリア・イタリア地区
ウィーン市内で最も貧しい地区のひとつにあるSSNDの教育機関(フリースガッセ)として、私たちはウィーン地域内外で平和教育を行っている学校として知られています。私たちは、文化、言語、宗教の異なる子どもたちや青少年を受け入れています。3歳から20歳までの約1,400人の子どもたちと青少年たちは、約40種類の言語と20派の異なった宗教・宗派を代表します。
国内、国際、社会の紛争や緊張の中で、平和教育とはどのようなものなのでしょうか?私たちの校舎の壁には「ピースリボン」が飾られ、生徒たちのそれぞれの言語で「平和」という文字が書かれています。それだけでは平和教育になりません。しかし、このリボンは私たちの使命を明確に示しています。私たちのコミットメントは、多様性を豊かさとして捉えることです。生徒たちはどこから来ても、誰であっても、誰でも歓迎します!私たちは誰をも受け入れます。
緊迫状態や対立する可能性は常にありますが、それは私たちが共に学ぶチャンスでもあります。私たちは、偏見を取り除き、平和的な共存をサポートするためのプログラムやプロジェクトをデザインしています。「make: Peace!(平和を築こう!)」をモットーに、”be.buddy!”というプログラムを実施しています。このプログラムでは、年長の子どもたちがバディとして新入生と行動を共にし、その子が溶け込むまでの段階をサポートしてあげます。
ここでは、ピアラーニング(生徒同士が共に、そして互いから学ぶ方法)が非常に重要です。調停や反暴力コースに関するトレーニングプログラムが成功を収めています。私たちはハイム・オメルの「New Authority(新しい権威)」の概念に従って活動しています。宗教的な学習は、生徒の所属する宗派と宗教間の両方で行われます。学年末には、社会的な特別な功績を評して生徒に「フリース平和賞」が贈られます。「言語と文化の多様性の日」のような異文化学習のためのワークショップは、色とりどりの多様性の中での平和的共存に貢献しています。平和教育は、学習者と教師が共に歩むものなのです。
アフリカにおける教育のトレンドの変化
シスター・ルーシー・ワイグワ(SSND)、アフリカ管区ガンビア
2023年の国際教育デーのテーマは、「to invest in people, prioritize education(人に投資し、教育を優先する)」です。アフリカのノートルダム教育修道女会では、私たちの多くは、教育改革が少しずつ進んでいる教育現場での使徒職に励んでいます。
これらの変化は、気候変動、デジタル化、都市化というアフリカのメガトレンドに対応するためのものです。私たちは、祈りによる支援と、さまざまなミニストリーにおける専門的な知識の提供を通して、これらの変化の援助をしています。
ここでは、教育におけるトレンドの変化の一例を紹介します。
ケニアでは、「能力ベースのカリキュラム」が、学習者の持つ能力を把握した上で実践的なスキルの付与に重点を置いています。デジタル読解力は、7つの能力の内の一つです。教科書が不足し、しかも高価であることから、そのギャップを埋めるためにテクノロジーにシフトしています。
ガーナでは、多くの生徒がuLessonという学習アプリケーションを使って、主要科目の復習をしています。すべてのアフリカ人に質が高く、かつ手頃な価格のアクセスが可能な教育を提供するを使命としています。スマホやノートパソコンで簡単にダウンロードすることができます。
ガンビアでは、正規教育とスポーツが非常に重視される側面があります。これは、理論偏重の教育から脱却するためのものです。学校のカリキュラムに十分な時間を割いているため、正規の教育が苦手な生徒の多くがスポーツに励んでいます。時代の流れを認識しながら、私たちは「1人1人の可能性を完全に開花させ」(遣わされている、会憲22)続けています。
平和の構築と生命の尊厳の擁護
シスター・レティシア・アントネロ、SSND、ブラジル、ラテンアメリカカリブ海管区
戦争、パンデミック、地震、虐待、人種差別、飢餓は、平和と生命の尊厳を脅かします。世界的であれ、地域の中であれ、人の生命が脅かされるという他者の痛みは、私の心を動かします。そして、すべての人が豊かな人生を送るために世に現れたイエス・キリストに触発されて、私は行動を起こします。
ブラジル・サンパウロ郊外のエリサ・マリアで、私たちSSNDは30年前から、極度の貧困と暴力の中で平和を築き、生命の尊厳を守るという呼びかけに応え、若者と大人のためのプログラムに取り組んできました。家族の多くは、ブラジルの北部と北東部からの移住者です。彼らは到着すると、失業やホームレスに直面し、麻薬や売春関連の仕事が簡単に手に入ってしまうというのが現状です。こういったことは、家族の生活の平和と尊厳を傷つけ、より良い生活への夢を難しくしてしまいます。
私たちは、そういった人たちを歓迎し、耳を傾けてあげ、互いに共存することを優先しています。180人の子どもたちと青少年を対象に、教育ワークショップやスポーツなどを通じて、人間として総合的に成長する機会を日々提供しています。子どもたちは、マザー・テレサ・オブ・イエス社会文化協会でバランスの取れた食事を食べさせてもらうことができます。私たちの悩みは、週末や休日になると、食べるものもなく、居心地のいい場所もなくなるので、多くの子供たちが悲しい思いをすることです。

カポエラ・ダンスのためのベリンバウを作るワークショップ
私たちがお世話をしている子どもたちや青少年が通う学校などから「この子達は人を尊敬し、感謝し、人に親切にするなど、考え方や行動が、他と比べると違う」という心温まるコメントをもらうことがあります。このような報告を聞くと、一層前進することを促され、希望で心が一杯になります。私たちは常に種を蒔き続けなければなりません、神のタイミングでちゃんと実がなるように。
私たちのコミットメントは、変化をもたらす種を蒔き続けることです。「様々な悪徳と死の兆候によって変形させられた」社会的現実に直面した私たちは、「ある人々が享楽的で、奔放に消費し、最新の消費財のためだけに生きているのに、ある人々が遠くから見ていて、ひどい貧困の中で一生を送るという世界における不正義を無視する聖性の理想は支持できない」(Gaudete et exsultate101「喜びなさい、大いに喜びなさい」)。
ブラジルの活動家、ベティーニョはこう述べています。「飢餓は早急に対処しなければならない」と。そこで、更に私は言いたい。生命の尊厳の擁護も急ぎ、平和の建設も急ぎ、地球への配慮も急いで対処しなければなりません。それは世界中の人々が皆、苦しんでいるからです。だから私たちは、希望であり平和であるあのお方を見つめながら、前進していかなければならないのです。
パーチェム・イン・テリス(地上の平和)60周年記念行事
シスター・マリネス・カプラ、SSND、国際シャローム・ネットワーク・コーディネーター、
今から60年前の1963年4月に、ローマ教皇ヨハネ23世は、冷戦に深く関わっていた世界に向けて回勅『Pacem in Terris(地上の平和)』を書かれました。当時はベルリンの壁が建設され、キューバ・ミサイル危機では核兵器の拡散が始まり、何百万人もの人々が怯えていた時代でした。
Pacem in Terrisの重要な内容は、人間同士、市民と公権力、国家間、そして国際社会における国民と国家の関係についてです。
これらすべての領域における権利と義務を提示しています。Pacem in Terrisは、人権、正義、平和構築、紛争の平和的解決の促進におけるカトリック教会や他の宗教団体の強い決意への道を切り開きました。また、SSNDにとっては、シャローム・ネットワークの設立や、「真理に基づき、正義によって築かれ、慈愛によって育まれ、活かされ、自由のもとに実現される」(Pacem in Terris 167)平和文化の構築に向けた我々の継続的な活動の基礎資料となっています。
Pacem in Terrisを読むと、とても現実的であり、傷ついた世界に平和を呼びかけるその鐘の音が聞こえてくるようです。Pacem in Terrisの平和の叫びと、過去2回の回勅の間につながりがあることがわかります。2015年の教皇フランシスコの回勅「ラウダート・シ」は、私たちの共通の家である地球への配慮について、「地球に住むすべての人」(LS 3)に宛てられ、私たちの日々の姿勢、行動、決断を通して、地球の未来をいかに形成しているかについて地球規模の対話を呼びかけています。
2020年の回勅、友愛と社会的友情について書かれた「フラテリ・トゥッティ」は、「物理的な近さに関係なく、生まれた場所や住んでいる場所に関係なく、一人ひとりを認め、理解し、愛すること “が取り上げられています。」(FT 1) 私たちは、世界の現実の中で、Pacem in Terrisがどのように実現されているのか、自問することができます。Pacem in Terrisをラウダート・シやフラテッリ・テゥティーとどのように関連づけることができるだろうか?どのような点で、それらは似ていて、互いに調和が取れるのだろうか?それらはSSNDのミッションにどのようなインスピレーションを与えてくれたのでしょうか?万物を一つにする神の証し人となる私たちの歩む道において、それらはどのように私たちを励ましてくれるのでしょうか?
ブレークダウン(崩壊)かブレークスルー(打開)か?
ベアトリス・マルティネス‐ガルシア、SSND UN-NGO代表、米国ニューヨーク
2021年9月、アントニオ・グテーレス国際連合事務総長は、2020年9月に加盟国から要請された「Our Common Agenda(私たちの共通のアジェンダ)」という報告書を発表しました。この報告書は、国連の今後の25年に向けたグテーレス氏のビジョンを反映したものです。このアジェンダは、既存の国際協定、特に「社会開発と持続可能な開発の目標」が含まれた2030年のアジェンダ内容の実施を加速させるための課題と提案を提示したものです。
グテーレス氏の次の発言は、86ページに及ぶこの文書の、全人類にとって共通善となるための方法を選択し、誰一人取り残されないように、という呼びかけを要約したものだと思います。「私たちが今日行動を起こす方を選ぶか、あるいは何もしない方を選ぶかによって、崩壊を招くことにもなれば、あるいはより環境に優しく、より良い、より安全な未来へ進む突破口ともなり得るのです。それを選択するのは私達なのです。」より環境に優しく、より良い、より安全な未来を築くために、SSNDとして、私たちはどのような選択をするべきなのでしょうか?
国連女性の地位委員会におけるSSNDの参加について
シスター・ベアトリス・マルティネス・ガルシア、SSND、国連NGO代表、ニューヨーク、米国
毎年、このニュースレターを通じて、ジェンダー平等と女性と少女たちのエンパワーメントを任務として取り組んでいる「女性の地位委員会」へのSSNDの参加についてお伝えしてきました。
2020年3月11日、世界保健機構はCovid-19をパンデミックと宣言しました。パンデミックによる世界的な不確実性から、委員会はデジタル・テクノロジーを活用して任務を継続する方法を模索しました。
2020年、CSW64は再開の通知があるまでは中断ということになりました。残念ながら、ドイツ、ホンジュラス、アメリカのSSND代表団は参加できませんでした。2021年、CSW65はバーチャルにて開催されました。これにはガーナ、ケニア、ナイジェリア、アメリカから13名のシスターと聖職者でない教師、そしてニューオーリンズの聖キャサリン・ドレクセル予備校から1人の教師と3人の生徒がオンライン参加しました。2022年、CSW66はハイブリッド形式で開催され、SSNDはGlobal PartnersであるRunning Waters and Justice Coalition of Religiousと協力し、World Water Dayに関するリフレクションを発表しました。幸いなことに、今年のCSW67は再び対面での参加でした。この会合には米国ニュージャージー州デマレストのAcademy of Holy Angelsと米国メリーランド州タウソンのNotre Dame Preparatory Schoolから3人のシスターと生徒、教師が参加することができました。
2007年より、私たちの学校の教師や生徒たちは、直接、そして最近ではオンラインでこの委員会会合に参加するよう招待されてきました。参加した人たちからの感想を聞いて、この会合は参加者たちにとってポジティブな学習体験となり、ジェンダー平等と女性や少女たちのエンパワーメントのために取り組み続けるモチベーションになっていることを確認しています。
プラスチックによる環境汚染
シスター・ビアトリズ・マルチネス・ガルシア、SSND、米国ニューヨーク国連NGO代表
国連環境計画のホームページで、「毎分、ゴミ収集車1台分のプラスチックが海に捨てられている」という記事を読んで、大きなショックを受けました。まるでプラスチックが私たちの地球を支配しつつあるような話ですね。ここでプラスチックのジレンマの表裏を現わすお話を一つ皆様に紹介したいと思います。
これは3ヶ月前に1日3回、週6日間の透析治療を開始した方のお話です。ご自宅でお子さんたちが透析を施してあげています。毎月、医療用品が家に送られてきます。毎週、ゴミ収集車が治療で使用した廃棄物を詰めた大きなビニール袋を運び出します。初めてそれを見たとき、彼らは「こんなにたくさんのプラスチックを使うのか!」と思ったそうです。「確かに、透析は腎臓ができなくなった機能を身内のためにしてくれるが、それと引き換えに、私たちの地球はどうなってしまうのだろうか?このプラスチックはいったいどこに運ばれて行くのだろうか?海に?プラスチックが分解されるまでにどれくらいの時間がかかるのだろうか?どのようにすれば、このようなプラスチック汚染を防ぎ、同時に人の命を救うことができるのでしょうか?」
2022年3月22日、国連環境総会は、「プラスチック汚染を終わらせる:法的拘束力ある国際文書に向けて」という決議を採択しました。この決議が上記に挙げられた質問に応え、海洋環境を含む全世界のプラスチック汚染を終わらせるための国際的な法的拘束力のある方策への道を開くことを願っています。さて、その間、あなたはプラスチック汚染を防ぐために、どのような取り組みをしますか?
シャローム/国連NGOニュースレターはSSNDの出版物です
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