国際的な連帯感の反映

全ての人に教育を

May 2021                                           pdf    532 KB     

導 入

新型コロナウイルス感染の地球規模での爆発的拡大は公衆衛生の問題ではありますが、同時にそれは教育の転換点であり、ラウダートシ(#203~#208)が私たちに呼びかけている「新たなライフスタイルに向かう」教育の在り方へと私たちを導くものです。コロナウイルスの感染拡大は、人類学やエコロジーを含む様々な分野で危機的状況を浮き立たせています。多くの学生が学校の勉強を続けられなくなり、或いは学生にとって学びが生活で直面する困難に対応する助けにならなくなっています。福者イエスのマリア・テレジア・ゲルハルディンガーのように、「私たちは、人が変われば世界も変わり得るとの確信をもって、教育にあたる」(会憲22)のです。私たちは身近なかかわりの中で最も弱い立場にある子ども、青年、若者に手を差し伸べるため、人間のきずなの、また科学技術のつながりのネットワークを生かし、彼らの「賜物を、この世界を築き上げる方向に導く」(会憲22)必要があるのです。

祈りへの招き

すべての知恵と知識の源である神よ、あなたが私たちに教育を委ねられた子ども、青年、若者たちを迎え、教育を通して尊厳ある質の高い生き方へと導く恵みをお授けください。福者イエスのマリア・テレジアから受け継いだ教育の伝統に倣い、私たちが奉仕が、正義に適い、造られたすべてものと連帯する全うなものでありますますように。

 

【体 験】

コロナウイルスがどれほど教育を変えたかについての2つの体験です。

私はエミリア・ヴィヴィエン・フェレイラ・ポルフィリオと申します。パライバ州奥地のカハゼイラス市で、私立学校の5年生を担当している教師です。コロナのためこれまでの教室での授業ができなくなると、突然、それまで無縁であった科学技術を使わなければならなくなりました。1日に4本のビデオを作ったり、児童たちの学びを支えるアニメやアバターを作ったりという多くの課題を何とかこなして行かなければならなくなったのです。教師としてのこれらの課題に加えて、これまでは学校共同体の中で行ってきたことを一人で対処する恐怖、不安定、孤独に向き合うことも新たな課題でした。私がこれらすべての困難を乗り越える助けとなったのは、祈り、同僚や友人、家族の支え、そして子どもたちのやさしさからくる希望でした。コロナがはじまったころ、ひとりの子どもが家に来て、「先生、先生が淋しくないように花を持ってきたよ」と言いながら花瓶に活けた花を差出ました。いつの日かこの全てが過ぎ去ることを思い、いまでも裏庭でこの花を育てています。

 

私はリジアン・シルヴァ・ヒレシャイムと申します。ブラジルのポルト・アレグレにあるヌモ・ノートレで、障がいのある人々のための教育のコーディネーターをしています。この取り組みは、障がいの違いにもより、多様なあり方が当たり前です。私たちは、多様な状況下で働くことに慣れていると思っていました。ところがコロナによる変化という、新たな世界に直面したのです。私たちはテクノロジーへの準備ができていないし、テクノロジーも障がい者の教育のために準備されていないということに気づかされました。私たちには、利用可能なテクノロジーのプラットフォームや行事、機器、インターネットのプラン、そして家族の支援もないという、これまでとは違う、障がい者故の差別と除外を体験しました。私たちのような社会的・教育的な組織は、これまで外を見て、社会を読みとり、そこから提供されるものを受け取ることに慣れていました。コロナから大いに学んだことは、自分たちの内側も見る必要があるということです。障がいのある若者や大人に無料の助けを提供し続ける方法を絶え間なく探すことに加えて、これまで以上に一致して、今世界を覆い始めている新たな時代に向き合うことに力を入れています。一歩一歩、試行錯誤しながらの前進です。私たちは、肥沃な土地であろうとする目標を持ち続けます。私たちの種は多様で、それぞれに花開き、今正に新たな季節を迎えようとしているのです。

 

【省 察】

  1. 新型コロナウイルス蔓延の今、教育に携わる者として私たちは何に気づかされ、何をしているのでしょうか。何に呼ばれていると思いますか。
  2. コロナ蔓延によって私たちが置かれているこの孤立した状況にあって、グループで、あるいは共同体と共にどのような体験や学びを分かち合いたいと思いますか。(省察を分かち合う時間をとる。)
  1. ラウダートシ#209~#211から「人類と環境の間の関わりを育む教育」についての記述を読み、「私たちの共通の家の全ての被造物を心にかけ世話すため、私たちはどの様な『徳』を培う必要があるか」について話し合いましょう。
  2. 「エコロジカルな市民性」(ラウダートシ211)を育む教育の場で、どのような行動を取ることが助けになるでしょうか。

 

【行 動】

  1. 「持続可能な開発目標」4の「質の高い教育をみんなに」について、自分の国でどれだけの取り組みがなされているか探してみましょう。「質の高い教育をみんなに」のゴールへの約束を果たすため、政府がどのような取り組みをしようとしているかを問いかけてはどうでしょうか。
  2. 教皇フランシスコが提案している「地球教育協定」を共に生きましょう。教皇フランシスコは、「教育は人間の尊厳と権利のため、ラウダートシの観点からの統合的エコロジーのため、平和と市民権を守るため、連帯し共に開発発展を目指すための取り組みである」と訴えています。
  3. 「ユネスコが認定する学校の国際ネットワーク」の目標は、子どもや若者の心に平和のとりでを築くことです。国際的な理解、平和、異文化間の対話、持続可能な開発、質の高い教育を支援することを実行するために働いているメンバー校が、182か国に1万5千校以上あります。このネットワークについてもっと学んだり、その目標を自分の使徒職に組み入れたり、あるいはこのネットワークに加わることを考えることができるかもしれません。

 

結びの祈り

左右交互に以下の祈りをしましょう。

 

全員:おお、神の知恵よ、被造界と人類が聖なる歴史の中で危機的状況に直面している今、私たちは、敢えて信じて賭けたいという願いの声を聴いています。

  • 私たちは、学び、変容されることを受け入れ、謙虚に生きます。
  • 私たちは、三位の神の中に、協働を生きることの神学的意味を探し求めます。
  • 私たちは、現代世界における預言的しるしとして、多様性の中に一致を築きます。
  • 私たちは、異なる文化が共にあって世界を作り上げることの理解を広げ、社会において異文化を受け入れ合いながら生きる術を身に着けることを誓います。
    • 私たちは、テクノロジーの影響を受け急速に変化する世界で教育に携わる者として、これまでの在り方にこだわらず、新たな応答をすることに賭けます。
    • 私たちは、いのちの尊厳を守り、あらゆる被造物を大切にし世話するために、他者と協働して教育に携わります。

    全員:私たちは、今取り組まなければならない緊急で重大な課題を見極め、その呼びかけに大胆に応えたいと願っています。聖霊が私たちをその息吹きで満たし、導いてくださいますように。アーメン!

     

     

     

     

    (ラテンアメリカカリブ管区)ブラジルのS.マリア・ホセテ・レッシュが準備してくださいました

    グラフィックデザインは第24回総会指針より。デザイン:修道会のコミュニケーション事務所